厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日の食物繊維の摂取目標量は18歳〜64歳だと男性が21gで、女性が18gとされています。

ただし、近年は日本人の食物繊維の摂取量は減少傾向にあります。
食物繊維は健康に深く関与する食品成分といわれているため、積極的な摂取が必要です。
食物繊維を積極的に摂るのであれば、食物繊維のことをきちんと知った上で正しく摂りたいですよね。

今回は、不足しがちな食物繊維の必要性を解説するとともに、1日の食物繊維の摂取目標量を摂るためにはどうすればよいか解説します。

1日の食物繊維の摂取目標量

冒頭でもお伝えしたとおり、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日の食物繊維の摂取目標量は18歳〜64歳だと男性が21gで、女性が18gとされています。

ただし、日本人の食物繊維の摂取量は減少傾向にあります。
以下では、食物繊維の摂取量が減ってしまった理由などを詳しく解説します。

日本人の摂取量は減少傾向にある

日本人の食物繊維の摂取量は、昔と比べると減少傾向にあります。
1950年代の日本人の平均食物繊維摂取量は20.5g/日、1970年代は14.9g/日と約20年間で減少しています。

厚生労働省の「令和4年国民健康・栄養調査」によると、男女・年代別の1人あたりの食物繊維摂取量の平均値は以下のとおりです。

年代 男性(g) 女性(g)
15〜19歳 20.8 15.3
20〜29歳 17.6 13.7
30〜39歳 18.2 15.5
40〜49歳 17.6 15.3
50〜59歳 18.9 16.9
60〜69歳 20.1 18.6
70〜79歳 21.0 20.1

参照:厚生労働省|令和4年国民健康・栄養調査

高齢者の世代では、厚生労働省が定める1日の食物繊維の摂取目標量に近い量を摂取できています。
ただし、10代(15〜19歳)〜50代では男女ともに1日の食物繊維の摂取目標量に届いていません。
なぜ、昔と比べると現代人は食物繊維の摂取量が減ってしまったのでしょうか。
理由を次章で解説します。

食物繊維の摂取量が減った理由

食物繊維の摂取量が減ってしまった理由は色々挙げられますが、本記事では「穀物離れ」を取り上げます。

1950年代の日本人の平均食物繊維摂取量は20.5g/日であり、この頃は穀物でエネルギーの約8割を摂取していました。
状況が一変するのは、1970年代からです。

いわゆる日本の高度経済成長期で、「食の欧米化」とよばれる食生活の変化が生じています。
具体的には、穀物の摂取量が減り肉類や乳類の摂取量が増えていきました。

その結果、脂肪エネルギー比率が上昇し、炭水化物エネルギー比率は減少していきます。

以下の表は、日本人の栄養素などの摂取量の変遷です。

この表をご覧いただくことで、時代の変化とともに日本人の食生活が変わっていったことがわかります。

年代 1950年(昭和25年) 1970年(昭和45年) 1990年(平成2年) 2010年(平成22年)
エネルギー 2,098kcal 2,210kcal 2,026kcal 1,849kcal
たんぱく質 68g 78g 79g 67g
うち動物性 17g 34g 41g 36g
脂質 18g 47g 57g 54g
うち動物性 20g 28g 27g
炭水化物 418g 368g 287g 258g
穀類エネルギー比率 77% 56% 46% 43%

参照:厚生労働省|日本人の栄養・健康状態の変遷について
※栄養素などの摂取量は、国民1人1日あたり、1歳以上となっています。
※穀物摂取量は平成13年から調理を加味した数量となっていて、「米・加工品」の米は「めし」「かゆ」などで算出しているため、単純な比較ができません。
また、すべての年で「小麦粉」を除いた値を、ここでの穀類として集計しています。
※ここでの穀類は、米以外に「大麦」や「雑穀その他」を含みます。

穀物とは植物から得られる食材で、米や麦、粟などが該当します。

精製されていない穀物には、食物繊維が多く含まれているのが特徴です。
現代ではコンビニやファーストフードなど簡単に食事を摂れるようになり、穀物の摂取量は年々減少傾向にあります。

時代の変化とともに日本人の食生活も変化し、穀物離れしていったことが食物繊維の摂取量に影響を与えたと考えられます。

だからこそ、現代では意識的に食物繊維を摂取していく必要があります。
次章では、食物繊維を積極的に摂取するにしても、食物繊維とはそもそもどのようなものかについて詳しく解説していきます。

食物繊維とは

食物繊維を積極的に摂取していくのであれば、食物繊維のことをよく知った上で摂取したいですよね。
そこで、以下では食物繊維について詳しく解説します。

食物繊維の定義と歴史

食物繊維とは、英語では「dietary fiber(ダイエタリーファイバー)」と呼ばれているものを直訳した用語です。

初めて「dietary fiber」という用語が登場したのは1953年で、医学・栄養学者のヒプスレー氏が提唱した仮説によるものです。

その後、さまざまな学者が食物繊維について研究していますが、2024年9月現在ではすべての研究者の合意に基づいた定義づけはされていません。

国際機関において統一化に向けた検討がなされているといわれています。

ただし、日本では「ヒトの消化酵素で消化されない食品の難消化性成分の総体」と定義されるのが一般的です。
参照:文部科学省|成分表における食物繊維の分析法の変更について

食物繊維は栄養素ではない?

「食物繊維は栄養素ではない」といわれることがあります。
その理由は、栄養と栄養素の解釈からお伝えいたします。

一般的に、栄養と栄養素とは以下のように定義されます。

  • 栄養:生物が外界から食物を得て、成長し、活力を保ち続ける身体の営み
  • 栄養素:栄養の源になる物質

食物繊維は基本的に消化吸収されない成分で、外界から取り込める物質ではありません。
また、欠乏症もないため、定義をそのまま解釈すれば「栄養素ではない」とも考えられます。

しかし、食物繊維は栄養素と同列で扱われることが多く、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルに次ぐ「第6の栄養素」とも呼ばれることがあります。

なぜ、栄養素の定義をそのまま解釈すれば栄養素ではないとも考えられるのに、栄養素と同列で扱われることが多いのでしょうか。
その理由は、食物繊維が健康に生きていく上で重要な物質だと考えられているからです。
次章で詳しく解説します。

食物繊維の重要性

食物繊維には、健康維持に関する多くの生理機能があるとされています。
具体的には、以下のような働きがあるといわれています。

  • 便通を整えて便秘を防ぐ
  • 脂質・糖・ナトリウムなどを吸着して身体の外に排出する
  • 生活習慣病(脂質異常症・糖尿病・高血圧など)を予防・改善する
  • 血糖値の上昇を抑制する
  • 血液中のコレステロール濃度の低下が期待できる
  • 整腸作用がある腸内細菌のエサとなり、腸内細菌の増殖に役立つ

また、食物繊維が不足しがちなこともあり、積極的に摂取しようということを推奨する意味でも他の栄養素と同列で扱うことが多いのでしょう。

食物繊維の種類

食物繊維は、性質の違いから大きく2種類に分けられるのが一般的です。

  • 水溶性食物繊維:水に溶けてゲル状になる
  • 不溶性食物繊維:水に溶けず繊維状になる

以下では、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維について詳しく解説します。

水溶性食物繊維

水溶性食物繊維とは、水に溶けてゲル状になる性質をもつ食物繊維です。
以下の表は、水溶性食物繊維についてまとめたものです。

特徴 代表的な食物繊維
・小腸や大腸で糖質やコレステロールの吸収を緩やかにする
・胆汁酸やコレステロールを吸着して体外に排出する
・粘着性があり腸内をゆっくり移動するため、腹持ちが良く食べ過ぎを防げる
ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸

不溶性食物繊維

不溶性食物繊維とは、水に溶けず繊維状になる性質をもつ食物繊維です。
以下の表は、不溶性食物繊維についてまとめたものです。

特徴 代表的な食物繊維
・腸壁を刺激して便通を促進する
・胃や腸で水分を吸収して大きくふくらむため、腸を刺激してぜん動運動を活発にする
セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン

食物繊維が多く含まれている食品

では、食物繊維はどのような食品に多く含まれているのでしょうか。
以下では、食物繊維が多く含まれている食品を種類ごとに紹介します。
※以下の表内の食物繊維量(g)は可食部100gあたりの食物繊維量です。

穀類

穀類には食物繊維が多く含まれているため、主食として以下に該当する食品を積極的に食べていきましょう。
米に関しては、精白米よりも玄米や雑穀米を選んだ方が食物繊維を多く摂取できます。

食品名 食物繊維量(g)
オートミール 9.4
そば(生) 6.0
ライ麦パン 5.6
麦めし 4.2

参照:文部科学省|食品成分データベース

いも類

いも類には食物繊維が多く含まれているため、積極的に摂取していきましょう。
ただし、糖質も多く含まれている食品もあるため、食品によっては食べ過ぎに注意が必要です。

食品名 食物繊維量(g)
こんにゃく(ゆで) 15.5
じゃがいも(皮なし) 9.8
さつまいも(皮なし) 4.5
しらたき 2.9

参照:文部科学省|食品成分データベース

豆類

豆類は食物繊維だけではなく、たんぱく質も豊富で低カロリーのためダイエット中の方に特におすすめの食品です。
他の食品類との相性もよいため、摂取しやすい食品といえます。

食品名 食物繊維量(g)
えんどう豆 17.9
糸引き納豆 9.5
そら豆 9.3
いんげん豆 8.5

参照:文部科学省|食品成分データベース

種実類

チアシードには特に食物繊維が多く含まれているため、苦手な方ではなく食物繊維をたくさん摂りたい方に特におすすめの食品です。
ただ、カロリーが高かったり高脂質な食品も多かったりするので、食べ過ぎには注意が必要です。

食品名 食物繊維量(g)
チアシード 36.9
らっかせい(いり) 11.4
アーモンド(無塩) 11.0
甘ぐり 8.5

参照:文部科学省|食品成分データベース

野菜類

野菜類は特に根菜系に食物繊維が多く含まれている傾向にあります。
また、レタスやキャベツ、ほうれん草にも食物繊維が含まれているため、普段の食事に取り入れたい食品群です。
野菜類は不足しがちなので、意識的に摂っていきましょう。

食品名 食物繊維量(g)
かんぴょう 30.1
切干しだいこん 21.3
いぶりがっこ 7.1
ごぼう(ゆで) 6.1

参照:文部科学省|食品成分データベース

果実類

果実類にも食物繊維が多く含まれています。
食後のデザートとして一品追加したり、ヨーグルトと一緒に食べるなど工夫することで毎日の食事に組み込めるでしょう。

食品名 食物繊維量(g)
干しかき 14.0
バナナ 7.0
ドライマンゴー 6.4
アボカド 5.6

参照:文部科学省|食品成分データベース

きのこ類

きのこ類は米や麺、肉類などと相性がよく、食物繊維が多く含まれていることから積極的に摂りたい食品です。
低カロリーでビタミンやミネラルも一緒に摂れるため、ダイエット中の方にもおすすめできます。

食品名 食物繊維量(g)
きくらげ(乾) 57.4
しいたけ(乾) 46.7
生しいたけ(油炒め) 6.4
エリンギ(焼き) 5.4

参照:文部科学省|食品成分データベース

藻類

藻類は一度にたくさん摂取することが難しいですが、食物繊維を多く含んでいるため積極的に摂りたい食品です。
海藻サラダとして食べたりあおさの味噌汁にしたりと工夫次第で毎日摂ることも可能です。

食品名 食物繊維量(g)
干しひじき(乾) 51.8
カットわかめ(乾) 39.2
まこんぶ(乾) 32.1
あおさ(素干し) 29.1

参照:文部科学省|食品成分データベース

1日の食物繊維摂取量の増やし方

ここまで、食物繊維の摂取量が不足しがちであることや、食物繊維の重要性などについて解説してきました。

「今日から積極的に食物繊維を摂取しよう!」

と思った方も多いでしょう。
そこで、以下では1日の食物繊維摂取量を増やす簡単なコツを3つ解説します。

主食を玄米やライ麦パンに変えてみる

主食として普段からお米やパンを食べている方は多いでしょう。

もし、主食として食べているお米やパンが「精白米」や「食パン」が多い方は、玄米やライ麦パンに変えてみましょう。
精製するほど栄養価は少なくなっていく傾向にあります。
玄米を食べることで、精白米の6倍の食物繊維を摂取できます。

一度試してみて継続できそうだと思った方は、ぜひそのまま継続していきましょう。

肉類と一緒にきのこ類を追加する

肉類を食べることが多い方は、野菜類や豆類、きのこ類なども一緒に食べるようにしましょう。
特に、きのこ類は食物繊維が豊富に含まれている食品が多いのが特徴です。

肉単品で食べるのではなく、プラスαで他の食材を加えた食事を意識しましょう。

味噌汁に藻類を追加する

味噌汁の具材には、藻類(あおさやわかめなど)を加えてみましょう。
豆腐や油揚げなどの大豆製品もおすすめですが、藻類も食物繊維が豊富に含まれています。

毎日同じ食材だと飽きてしまう可能性があるため、日替わりで味噌汁の具材を変えてみるのもおすすめです。

食事とサプリメントを組み合わせて食物繊維を摂取しよう

  • 価格:1,480円~1,980円
  • 容量:240粒入(1日8粒目安)

これまで、食物繊維が多く含まれている食品をご紹介しました。
しかし、忙しくて自炊が難しい場合や、好き嫌いやアレルギーなどがあり、紹介した食材を摂りにくいという場合もあるでしょう。

そのような時は食事のサポートとしてサプリメントを活用するのがおすすめです。

菊芋生活は、食物繊維が多く含まれているいも類の中から、国産の菊芋を使用して作られたサプリメントです。
菊芋は今話題の水溶性食物繊維「イヌリン」を多く含む有数の食材で、スーパーフードです。

さらにイヌリン以外にも、トウモロコシをはじめとした5つの食材の食物繊維をバランスよく配合。

1袋当たり、51,000mgの食物繊維を配合したサプリメントです。毎日食物繊維をしっかりと摂りたい方におすすめのサプリメントです。

食物繊維は摂りすぎ注意?

ここまで「積極的に食物繊維を摂取しましょう!」という内容をお伝えしてきましたが、実は食物繊維は摂りすぎもよくないといわれているのはご存知でしょうか。

具体的には、以下のような反応が起きる可能性があるといわれています。
※影響は人それぞれなので、必ず影響が出るとは言い切れません。

・栄養素が吸収されにくくなる可能性がある
・便秘や下痢の症状に悩まされる

整腸作用が期待される食物繊維ですが、摂りすぎることで悪影響をもたらしてしまったら本末転倒です。
食物繊維は積極的に摂取することを推奨されていますが、国が推奨する基準量(18歳〜64歳だと男性が21gで、女性が18g)を守って摂取することをおすすめします。

不足しがちな食物繊維を積極的に摂取しよう!

今回は、不足しがちな食物繊維の必要性を解説するとともに、1日の食物繊維の摂取目標量を摂るためにはどうすればよいか解説しました。

まずは、国が推奨する1日の食物繊維摂取量を覚えておきましょう。
男性が21g/日、女性が18g/日とされています。
(18歳〜64歳)

1970年代から「食の欧米化」とよばれる食生活の変化によって食物繊維の摂取量が減少していった歴史があります。
しかし、食物繊維には健康維持に関する多くの生理機能があるとされているため、意識して食物繊維を摂取していくことをおすすめします。

具体的には、日ごろから食べているものを少しだけ変えてみたり加えてみたりする簡単な工夫から始めてみましょう。
今回の記事を参考にして、不足しがちな食物繊維を積極的に摂取してみてください。